exhibition
展示
とんがり帽子の屋根が特徴の世界遺産を復元
イタリア アルベロベッロの家
とんがり帽子の屋根が特徴の世界遺産を復元
イタリア アルベロベッロの家
復元年代
復元方法
石造りの家、トゥルッリ
イタリア半島南部、プーリア州アルベロベッロの郊外の農家をモデルに母屋、畜舎、貯水槽などを復元し、地中海性気候の風土の中、ウシを飼いながらオリーブなどの果樹を栽培する農家の雰囲気を再現しています。
アルベロベッロの伝統的な家屋は、とんがり帽子のような屋根を持つことが特徴です。屋根は平たい石を積み上げて作り、このような屋根をいくつかもつ家屋をトゥルッリと呼びます。
トゥルッリは、床、壁、天井、屋根すべてを石で造ります。材料は、アルベロベッロ近辺で豊富に採れる石灰岩です。石灰岩は層を成して地中にあり、表土に近いところは比較的薄く、深くなるにつれ厚いものとなっています。薄い石は屋根や床に、ちょっと厚いものは天井に、もっと厚い石は壁にと、材料の暑さで使い分けています。
現在でも多くのトゥルッリが、人びとの生活の場として使われています。
から石積み
屋根は薄く平らな石を積み上げてつくります。トゥルッリ造りでは、元来モルタルのような接着剤を使いません。石をただ積み上げ、その摩擦と重みだけで天井を支える、から石積みが伝統的工法です。現在でも、できるだけモルタルを使わずに積むことが、職人の腕の見せ所です。
家の顔、ピナーコロとシンボル
この屋根用の石はキャンカレッレと呼ばれています。頂上のピナーコロは屋根押さえが飾りへと発展したもので、さまざまな意匠があり、大地や太陽などが表現されています。その下には石灰プラスターでさまざまなシンボルが描かれます。
脱税が生んだ世界遺産
アルベロベッロに人が住みはじめた15世紀当時、農民らは領主の命令で森を開墾し畑をひろげ、集落をつくりました。王から土地を与えられ税金を納めるべき領主は、新しい住民や家屋を王に報告する義務を怠り、税金を納めませんでした。この税金逃れのため、農民らはトゥルッリを造らされ、住まわされたのです。石を積み上げただけの家ならば、視察官が不意に来ても、すぐに屋根を壊してやりすごすことができ、造り直すことも簡単だったからです。
簡単とはいっても住民にとっては大変な苦役でした。しかし、18世紀末まで300年続いた歴代領主の脱税行為により、トゥルッリ造りの技術は進歩し、トゥルッリの連なる街並みができました。
1996年にはユネスコの世界遺産にも登録され、人類共通の遺産として世界中の人びとが訪れています。